天才じゃないギフテッドのブログ

全然「天才」じゃないIQ140超えがギフテッドの実態について書くブログです。

大人のギフテッドとその特徴について(職場編)

ギフテッドというと以前は子どもについての話題を目にすることが多かった印象ですが、近年では大人のギフテッドについても着目されるようになってきました。

例えば以下のような記事です。この記事ではあるギフテッドの大人が社会に出たときに遭遇した困難について語られていますが、大人になってからギフテッドであることに気づいた人は多かれ少なかれこのような経験があるのではないでしょうか。

dot.asahi.com

実際、私も会社で同僚や上司とうまくいかなくて悩んだ末にギフテッドという概念にたどり着きました。この記事では同じように周囲との適応に悩んでいるギフテッドやその周囲の人の参考になるように、大人のギフテッドの特徴や仕事場などで起こる出来事などについて解説していきます。

 

目次

 

ギフテッドとは

一般的にギフテッドといえば天才というイメージだと思いますが、少なくともギフテッド支援の現場ではいわゆる天才に限定せず高いレベルの才能や素質を持つ人全般のことを指します*1*2*3。また心理学分野の論文ではIQ130以上と定義されることが多く*4、これはだいたい人口の2%くらいに相当します。50人に1人なので、学校のクラスでいえば2クラスに1人はいるくらいのありふれた存在です。

なお、未だに勘違いされている方もいるようなので先に明言しておきますがギフテッドは発達障害自閉症スペクトラムとは異なった概念であり、ギフテッド=発達障害というわけではありません

haruaki.shunjusha.co.jp

大人のギフテッドは存在するの?

結論からいうと存在します。たとえばメンサはギフテッドの分かりやすい例だと思います。メンサはIQ130以上が入会基準になっており、さきほど挙げた定義と同等のものになっています。それ以外にも、心理学分野では大人のギフテッドを扱った論文が多数存在しており、特に大人のギフテッドを扱った以下の論文では The Gifted Adult: A Revolutionary Guide for Liberating Everyday Genius(tm) (English Edition) という書籍から次のように引用しています。

「これらの子供たちは、16歳、18歳、または21歳のときに、捨てられた皮のようにギフテッドを脱ぎ捨てたわけではありません。子どものギフテッドは成長し、大人のギフテッドになります。」

“It’s not as though these former children slough off their giftedness like discarded skin at the age of sixteen or eighteen or twenty-one. Gifted children do grow up, and they become gifted adults”

Gifted Adults: A Systematic Review and Analysis of the Literature

一方で世間では「十で神童 十五で才子 二十過ぎれば只の人」などと言われます。実際のところ大人になって「只の人」になるわけではなく、大人になると子供の頃のようにテストの点数という比較しやすい指標がなくなってしまい区別がつかなくなるのが原因と思われます。また、社会で成功を収めるためにはさまざまな要因が関係してくるため、単にIQが高いからといって成功するとは限らないという事情もあります。

 

大人のギフテッドの特徴とは?

基本的には子どもの頃の特徴と大して変わりません。アメリカのギフテッド支援機関のDavidson Instituteの記事では以下のような特徴が挙げられています。

www.davidsongifted.org

思考のスピードが速い

IQが高いというところからも連想できますが、思考スピードが速いです。ただし周囲から見ると思考が飛び飛びになっているように見えることもあります。ギフテッドはその思考過程をすべて説明するわけではないからです。しゃべりが思考に追いついてない状態ですね。

感受性が高い

聴覚、視覚、触覚などの五感を始めとして、精神的、知的、感情的な刺激に対する反応が他の人たちよりも激しいという特徴があります。AHDHのように見えることもありますがそれとは根本的に別物です。

内向的である

ギフテッドはその感受性の高さにより傷つきやすいため、内向的な傾向を示すことが多いです。実際私もかなり内向的な性格です。

感情的に幼さが残るところがある

論理的思考が発達しておりそれに頼るところが大きく、感情的な発達が遅れがちです。ただし遅れているだけで異常はありません。

創造的な思考

ギフテッドの思考はただ速いだけでなく思考回路自体が多くの人とは異なっており、問題解決も一種独特なやり方をするように見えます。また、パターン認識が得意であることが多いため直感的に答えを導き出すこともあります。

自立的

自分の意見を持っていて、他者に頼らず自分で判断することができます。反面、周囲に無批判に順応することは少なく、ときに上司や同僚から反抗的という印象を持たれることがあります。特に独裁的な上司や教師だとその傾向があります。

完璧主義的

より多くのことを考慮にいれて物事を考えるため、他人からみれば完璧主義的に見えます。ただし本人の自覚としてはやるべきことをやっているだけであり、完璧ではないと思っています。

 

大人のギフテッドの特徴は以上のようなものになります。これらの特徴は私もほぼすべて持ち合わせており、こういうところから自分がギフテッドなのではないかと疑い始めるきっかけになりました。

職場で観察されるギフテッドの特徴

言うまでもなく予想できることかもしれませんが、職場でのギフテッドのプラスな特徴は高い成果を出す可能性があることです。持ち前の知性や創造的な思考力を活かせれば、職場が抱えている複雑な問題を解決することができます。

一方でギフテッドのマイナス面が職場で現れたときの特徴をまとめたのが以下です。これも先程のDavidson Instituteのサイトからの引用です。

周囲の評価 本人の言い分
上司との衝突が多い 正義感が強いだけ
同僚の言うことに耳を傾けない 自分のほうがだいたい正しいのに、理解されない
モチベーションがどこにあるのか分からない 同僚から危険視されている気がする
時間管理が下手 周りの人が遅いだけ
業績に大きなムラがある 自分が正しく理解されておらず、評価が不当
色んなところに首を突っ込む すべてが興味深い
忍耐力がない 気が散りやすい
社交性がない 世間話が嫌いなだけ
職場環境への文句が多い むしろ今の環境で仕事ができるほうが不思議

これを見るとなんだかギフテッドがすごく面倒な人に見えますが、ギフテッドが全員こういう特徴を職場で出すわけではありません。それではどのような場合にこのようなことが起きるかというと、以下で説明するような場合です。

なぜそうなるのか

こういった認識の食い違いが起きる原因の一つとして、ギフテッドが自分の知性を認識していないことが挙げられます。なんだか嫌味な言い方に聞こえるかもしれませんが、実際問題としてギフテッド本人が周囲と知性にそんなに差があると思っていないからこそ、周囲の人のほうが仕事が遅いとか話がつまらないと感じたりするわけです。本当はギフテッドのほうが速かったり、興味をもつ話の種類が根本的に異なっているだけなのです。違いを認識することが誤解を解くための最初の一歩です。

どうすればいいのか

ギフテッド側の対応

まずギフテッドは自分の知性を正しく認識する必要があります。日本国内ではWAIS(WISC)を受けるのがベストだと思いますがちょっと高い(2万円くらい)ため、その代わりにメンサ(11,000円)を受検してみるのもいいと思います。また、メンサは無料の簡易IQテストがあるので受検前にだいたいどのくらいのIQがあるのかを確認するのに使えると思います。私はWAISを受けましたが、以下のテストと同様の分野(知覚推理)ではだいたい同じくらいの数値が出ました。

www.mensa.org

自分がギフテッドであることが分かったら、次は自身と周囲の違いを具体的に認識するように努めてみるといいと思います。以下のページにはもっと具体的なギフテッドの特徴が載っているので参考にしてみてください。

giftedadult.hatenablog.jp

周囲と自分の違いを認識すると、今まであった納得のいかない出来事の理由が見えてくることがあります。すべてをギフテッドという特性のせいにするのは間違っていますが、自身のこれからの行動に変化を加えるにあたって良いヒントを得られる可能性があります。

周囲の人の対応

一方で上司や同僚がギフテッドにどのように対応すべきかというと、基本的にはできるだけ本人の自由にさせることです。ギフテッドは多くの人たちとは異なる思考回路を持っているため、他の人と同じようにやらせようとしてもうまくいきません。何かしらの作業指示を与える場合は細かい手順を与える代わりに最終的に達成すべき目標や結果に焦点を当てた指示を与えるようにすると本人の特性に合いやすく、また成果も上げやすいです。

手がかかるように思えるかもしれませんが、視点を変えればギフテッドは前例や細かい手順がなくても自分でやり方を開発できるということでもあり、新規事業や研究開発など既存のノウハウがない分野で活躍できる可能性が高いです。私自身も既存の決まりきった手順に従う業務よりも社内で誰もやってない新しいことのほうがやっていて充実感がありましたし貢献度も大きかったです。ただしある程度自由にやらせてくれる、という条件付きですが。

 

最後に

今回は大人のギフテッドの特徴について解説しました。基本的には子どものころと大差ありませんが、職場という大人ならではのシチュエーションでの特徴も合わせて解説することでギフテッド像がより具体的になり、マイナス面にどう対応すれば良いのかという点についても具体性が出てきていると思います。

それでは簡単ではありますが、最後におすすめのギフテッド本を紹介して今回はこのくらいで終わりにしたいと思います。

 

*1:Students with gifts and talents perform—or have the capability to perform—at higher levels compared to others of the same age, experience, and environment in one or more domains. 

https://nagc.org/page/what-is-giftedness

*2:"The term ‘gifted and talented,” when used with respect to students, children, or youth, means students, children, or youth who give evidence of high achievement capability in such areas as intellectual, creative, artistic, or leadership capacity, or in specific academic fields, and who need services or activities not ordinarily provided by the school in order to fully develop those capabilities.

https://www.govinfo.gov/content/pkg/PLAW-107publ110/pdf/PLAW-107publ110.pdf

*3:

  • ずば抜けた才能ゆえに高い実績をあげることが可能な子ども。
  • 実際目に見えて優れた成果をあげている子どもだけでなく,潜在的な素質のある子どもも含む。功績とギフティッドとは関係ない。
  • 才能の領域:知的能力全般,特定の学問領域,創造的思考や生産的思考,リーダーシップ,音楽,芸術,芸能,スポーツ。

知能検査とギフティッドの判定 - 論文・レポート

*4:Although IQ represents only a partial expression of giftedness, according to a purely psychometric view, giftedness is defined by an IQ of 130 or higher, placing gifted individuals at least two standard deviations above the population mean.

The Cognitive Profile of Gifted Children Compared to Those of Their Parents: A Descriptive Study Using the Wechsler Scales - PMC