ギフテッドの特徴とは?専門家によるリストで具体的に解説
Googleで検索すればさまざまなギフテッドの特徴が挙げられているリストを見ることができます。「記憶力が良い」や「並外れたユーモアのセンスがある」、「リーダーシップがある」などはだいたいどのリストにも載っていますが、ギフテッドであればこういう特徴すべてを持ち合わせているのでしょうか?また、「記憶力が良い」といってもどの程度良ければその特徴を持っていると言えるのでしょうか?
もちろん、記憶力(というかワーキングメモリー)についてはWISCやWAISなどのIQテストを受ければ数値としてはっきりするのですが、検査には2万円前後の費用が必要になるためおいそれと受けるわけにはいきません*1。ギフテッドの特徴リストはそういった医療的な検査を受ける前に使える手軽なチェックリストですが、それをもう少しだけ「使える」ものにするため、特徴リストにちょっとだけ解説を加えてみようと思います。
目次
ギフテッドに特徴的な行動リスト
まずは以下の本に載っているリストです。なお、この本に書いてあるリストは行動面の特徴であり、他者からも観測可能なものが列挙されています。
・年齢のわりに並外れて語彙が多く、文章の構造が複雑
・言語の細部を深く理解している
これはおそらく小説や詩、または論理的な文章を書いたり理解したりすることを意味しているのだと思います。
・注意力の持続する時間が長い
これは(興味のあることに関しては)集中力の持続時間が長いということを意味しています。
・精神的な強烈さと繊細さ
これは、感受性が非常に高く、一般的な人よりも強烈な感情、感覚、知覚を持つことを指しており、専門用語ではOverexcitabilityと言われる特性のことです。
・興味の範囲が広い
例えばコンピューターサイエンスから言語学、政治思想、時事問題など幅広い興味を持っている場合などが該当します。
・非常に強い好奇心とそれに基づく絶え間ない質問
具体的にはギフテッドの子どもが大人を質問攻めにして困らせる、などのような現象が挙げられます。
・実験したり、他人とは違うことをすることに興味がある
・発散的な思考と、珍しい、明白ではない、創造的な方法でアイデアや物事をまとめる傾向がある
これは一言で言えばクリエイティブさという意味です。普通とは違うやり方を思いつく傾向がある場合に該当します。
・少ない練習で、より早く基礎スキルを習得する
ギフテッドは興味のある分野では1,2回の反復で基礎的なスキルを習得してしまうことがあります。
・大部分は学校に上がる前に読み書きを独学で学ぶ
非常に知能レベルが高い子どもであれば3歳ごろにはすでに字を読める場合があるようです。
簡単な本を読めるようになる平均年齢は4歳未満
The mean age at which the children sight-read an easy reader was before 4. (Rogers & Silverman, 1997)
・記憶力が良い
一口に記憶力と言っても短期記憶や長期記憶、エピソード記憶などがありますが、この場合の記憶力とは多くの情報を覚えていたり、情報を一時的に頭の中に保持して処理する能力(ワーキングメモリー)が高いことを指しています。
・想像上の遊び相手がたくさんいる
これはイマジナリーフレンドのことを指しています。
・並外れたユーモアのセンス
・複雑な仕組みを通じて人や物を組織化したがる
これはいわゆるリーダーシップのことを指しています。ギフテッドのリーダーシップとは強い正義感や公正性、理想主義的な姿勢がその根本にあるため、それらの特徴が見られるかどうかで判断すると分かりやすくなるかもしれません。
行動面のリストについての解説は以上です。以下では行動面だけじゃなく内面も含めたギフテッドの特徴リストを紹介します。
内面も含めたギフテッドの特徴リスト
先程挙げたのは行動面の特徴でしたが、内面も含めたリストも一応紹介しておきます。最初のほうでも取り上げましたが、NAGCというアメリカのギフテッド支援団体のWebページに載っているリストです。ちなみに私の場合は38個中26個が当てはまりました。
認知面
- 鋭い抽象化の能力
- 問題解決と概念を適用することへの関心
- 読書家で読む速度が速い
- 豊富な語彙
- 知的好奇心
- 批判的思考、懐疑心、自己批判が強い
- 持続的で目標に向けた行動
- 興味と能力の多様性
- 自立的に仕事と勉強に取り組む
クリエイティブ面
- 創造性があり、創意工夫が見られる
- 鋭いユーモアのセンス
- 空想する能力が高い
- 刺激に対するオープンさ、幅広い興味
- 直観力
- 柔軟性
- 自立的な態度と社会的行動
- 自己受容的で社会規範に無関心
- 急進主義的
- 自ら選んだ仕事に対して美的かつ道徳的に取り組む
感情面
- 並外れた感情の深さと激しさ
- 他人の感情に対する敏感さまたは共感
- 自分自身や他人に対する高い期待があり、それによりしばしばフラストレーションを感じる
- 自己認識力が高く、自分が他人と異なるという感覚を持つ
- 傷つきやすく、精神的なサポートが必要
- 抽象的な価値観と個人の行動との間に一貫性を要求する
- 高いレベルの道徳的判断
- 理想主義的で正義感が強い
行動面
- 自発性
- 限りない熱意
- 情熱に重点を置く – 自分の興味に夢中になるとそれを中断することを嫌がる
- 非常に精力的で、睡眠をほとんど必要としない
- 絶え間ない質問
- 飽くなき好奇心
- 衝動的で熱心で元気いっぱい
- 忍耐力 - 重要な分野における強い決意
- 高いレベルのフラストレーションを感じる - 特に(自分自身または他人から課せられた)パフォーマンスの基準を満たすのが難しい場合
- 不安定な気性、特に失敗に関連して
- 止まらない会話/おしゃべり
Traits of Giftedness | National Association for Gifted Children
特徴の強さはどのくらいが基準なのか?
それぞれの特徴の明確な基準というものは、私が調べたかぎりでは存在しません。ギフテッドの定義から考えれば普通の人と比べてその特徴を明らかに強く持ち合わせているかどうかというところが基準になると思います。
全ての特徴に該当する必要はない
アメリカのギフテッド児支援団体であるNAGCのサイトには、以下のような記述があります。
ギフテッド児は非常に多様なため、すべての特徴を常に発揮するわけではない。
Because gifted children are so diverse, not all exhibit all characteristics all of the time.
Common Characteristics of Gifted Individuals | National Association for Gifted Children
ギフテッドに共通する特徴はたくさんあるが、すべての領域で特徴を発揮するギフテッドはいない。
There are many traits that gifted individuals have in common, but no gifted learner exhibits traits in every area.
Traits of Giftedness | National Association for Gifted Children
つまり、ギフテッドだからといってリストの特徴すべてを持ち合わせているわけではないということです。実際、以上で紹介した2種類のリストでは私は半分から7割くらいしか当てはまりません。特徴を多く持っているほどギフテッドの傾向が強い、くらいに考えたほうが実情に沿っていると思います。
一方で、このリストの何割以上に該当すればギフテッドと言えるのか、というのがこれを読んでいる人の気になるところだと思いますが、残念ながらこのリストはギフテッドにありがちな特徴を集めたものであってギフテッドを診断するためのリストではないため、そういう基準は存在しません。
そもそも現状では日本国内にギフテッドの認定機関は存在しないため何をどうやってもギフテッドは自称にしかならないのですが、少しでも確実さを求めるならWISCやWAISを受検してIQ値で判断することではないでしょうか。少なくともIQが130以上あれば確実にギフテッドであると言える、と上越教育大学大学院の角谷准教授は述べています。
まず,「FSIQが130以上であれば,ギフティッドである」ということは確かだと考えてよいということを押さえておく必要があるかと思います。
終わりに
今回は、ギフテッドの特徴を行動面と内面の両方から取り上げて紹介しました。内容自体はよくあるものではありますが、ギフテッドの分野では有名な専門家および専門機関によるリストを選んであるため、信頼性は比較的高く網羅的になっているはずです。
それでは今回はこのくらいで。