ギフテッドとは?天才?それとも発達障害?
最近、ギフテッドという言葉をメディアで見かける機会が増えました。そこでは賢い系の芸能人やIQが高い子ども、アインシュタインなどの歴史的な天才がギフテッドの例として挙げられることが多いので、「ギフテッド=天才」みたいな印象を多くの人は持っているのではないでしょうか。また別の面では、障害者支援施設がギフテッドを受け入れていることもあり、そこから「ギフテッド=発達障害」と考えている人も散見されます。
実のところ、「ギフテッド=天才」ではありませんし、「ギフテッド=発達障害」でもありません。ギフテッドの中には天才も居るし障害を持つ人もいますがそれらの人たちは少数派です。
「じゃあギフテッドっていったいなに?」という疑問に、この記事では答えていこうと思います。
目次
- Q. ギフテッドとは?定義は?
- Q. ギフテッドの基準は?
- Q. 天才じゃないの?
- Q. 発達障害じゃないの?
- どういう人たちなの?特徴は?
- Q. 顔立ちに特徴はあるの?
- Q. ギフテッドの大人もいるの?子どもだけなの?
- 終わりに
Q. ギフテッドとは?定義は?
A. 優れた成果を上げる(潜在的な)素質がある人のことです
実は世界的に統一されたギフテッドの定義というものは存在しません。しかし、多くの研究者や主要な支援機関が採用している定義はだいたい上記のようになっています。日本語だと上越教育大学の角谷准教授の解説が詳しいので以下に引用しておきます。
まず,大前提としてギフティッド(児)の定義を概観すると,以下のようになります。
- ずば抜けた才能ゆえに高い実績をあげることが可能な子ども。
- 実際目に見えて優れた成果をあげている子どもだけでなく,潜在的な素質のある子どもも含む。功績とギフティッドとは関係ない。
- 才能の領域:知的能力全般,特定の学問領域,創造的思考や生産的思考,リーダーシップ,音楽,芸術,芸能,スポーツ。
また、この定義を見ると分かるようにギフテッドとは知的な才能だけでなく芸術やスポーツなどの才能についてもその対象となっています。が、おそらくこの記事を見に来た人は知的な才能を持つギフテッドについて知りたい人が大多数だと思われるため、以下では知的な領域に絞って解説します。
Q. ギフテッドの基準は?
A. IQ130以上なら確実にギフテッド、障害がある場合はそれ以下でも可能性あり
ギフテッドは病気ではないため世界的に統一された明確な基準や診断方法はありませんが、前掲の角谷准教授によればIQ130以上なら確実にギフテッドとのことです。
「FSIQが130以上であれば,ギフティッドである」ということは確かだと考えてよいということを押さえておく必要があるかと思います。
ただし、発達障害などがある場合は無い場合と比べてIQスコアが下がってしまうことがあるため、IQ130以下だからといってギフテッドでないとは限りません。障害を持っているギフテッドのことを2Eと呼びますが、そのあたりについては以下の記事で詳しく解説しています。
Q. 天才じゃないの?
A. 天才はごく一部だけで、大半は「頭よさそう」程度
IQ130以上なら確実にギフテッド、と説明しましたがこのIQ130以上に該当するのは人口比率でいうと2%、つまり50人に1人の割合です。アインシュタインレベルの天才が50人に1人も存在するわけがないため、この数字からも「ギフテッド=天才」というイメージが間違っていることが分かります。
研究者によってはギフテッドをIQスコアによって分類していて、その分類は以下のようになっています。これを見れば分かるように、いわゆる「天才」に該当しそうなギフテッドは数%程度しか存在しません。ギフテッドの大半は「穏やかな」に該当する人たちであり、なんらかの優れた才能はありつつも「天才」とまではいかない可能性が高いです。
ギフテッドレベル | IQ score (WISC) | 全人口中の割合 | ギフテッド中の割合 |
穏やかな (gifted, mildly gifted) |
130-138 | 2% | 75% |
高度な (highly gifted) |
138-145 | 0.6% | 19% |
並外れた (exceptionally gifted) |
145-152 | 0.1% | 5% |
非常に優れた (profoundly gifted) |
152-160 | 0.03% | 1% |
出典:What is Highly Gifted? Exceptionally Gifted? Profoundly Gifted? And What Does It Mean?
Q. 発達障害じゃないの?
A. ギフテッド=発達障害ではありません。が、中には発達障害を持っている人も
ギフテッドは発達障害とは異なる概念*1であり、ギフテッド=発達障害というわけではありません。ただ、ギフテッドの中には障害を併せ持っている人もいて、その人たちは2E(Twice Exceptional - 二重に例外的)と呼ばれます。2Eの割合は研究によって差があり、2%から9%程度であると言われています。詳しくは以下の記事で解説しています。
どういう人たちなの?特徴は?
ギフテッドはそれぞれが個性的なので全員が同じ特徴を持っているわけではありませんが、多くのギフテッドに共通する特徴としては主に以下が挙げられます:
- 知的能力
- ものごとを抽象化する能力や問題解決能力が高い。また、語彙が豊富
- 好奇心旺盛
- 好奇心が旺盛で、幅広い興味を持つ
- 批判的思考*2
- ものごとを多様な角度から検討し、論理的・客観的に理解する能力が高い
- 創造性
- クリエイティブな考え方が得意
- 感情の深さ
- 普通の人よりも感情を強く感じる
詳しくは以下の記事で解説しているので、興味がある方は読んでみてください。
Q. 顔立ちに特徴はあるの?
A. ありません
以下のページで、ギフテッドに特徴的な顔立ちがないことを解説しているので興味がある方は読んでみてください。
Q. ギフテッドの大人もいるの?子どもだけなの?
A. ギフテッドの大人も存在します
以下に引用する論文では大人のギフテッドを扱っており、その中でThe Gifted Adult: A Revolutionary Guide for Liberating Everyday Genius(tm) (English Edition) という書籍から次のように引用しています。
「これらの子供たちは、16歳、18歳、または21歳のときに、捨てられた皮のようにギフテッドを脱ぎ捨てたわけではありません。子どものギフテッドは成長し、大人のギフテッドになります。」
“It’s not as though these former children slough off their giftedness like discarded skin at the age of sixteen or eighteen or twenty-one. Gifted children do grow up, and they become gifted adults”
Gifted Adults: A Systematic Review and Analysis of the Literature
大人のギフテッドの特徴については以下の記事に詳しく解説しています。giftedadult.hatenablog.jp
終わりに
今回はギフテッドとは何かをざっくりと解説しました。ネット上のギフテッド情報は信頼性に乏しいものが散見されますが、この記事では専門家や著名な支援組織などの確かな情報源に基づいて解説・紹介しています。もしギフテッドについてもっと知りたくなった場合は他の記事を読んでいただければ幸いです。
最後に、私が自分自身をギフテッドであると確認するのに大いに役立った本を紹介して終わりにしたいと思います。
*1:"Giftedness is not considered a disability" What is Giftedness? | Gifted Definition & Meaning